ペット信託とは
◆ペットを護るために◆
人間の寿命も伸びていますが、動物医療やペットフードの進化によりペットの長寿化も進んでいます。
飼主様が長期入院したり、ペットより先に亡くなった場合、問題は残されたペットの処遇です。自身に万一のことがあった場合のペットの行く末を案じておられる飼主様も多いことでしょう。
特に高齢者の場合、自身の施設入所後あるいは死亡後のペットの世話を子どもや友人に頼りたいところです。
しかし、親族等がペットを飼えない環境であったり、動物が苦手なので引き取れないといったこともあります。
新たな飼主がみつからない場合、最終的にペットは殺処分されてしまうことになります。
私自身、小学生の頃からずっと犬とともに過ごしてきたこともあり、ペットの殺処分問題には心を痛めている者の一人です。
そのため、勤務している司法書士事務所の業務とはまったく別に、飼主様の不安を解消すると同時に、ペットを殺処分から護るための方法を提案させていただきます。
◆ペット保護のための手段◆
残されるペットのことを心配しておられる飼主様が採れる手段としては、例として下記1~5のようなものがあります。
【1.ラブポチ信託】
ラブポチ信託は【認定NPO法人ピーサポネット】が開発したシステムです。
ラブポチ信託の詳細についてはピーサポネットのホームページで紹介されています。
あるいは、ピーサポネットと提携している【一般社団法人日本ペットトラスト】のホームページからも入ることができます。
ラブポチ信託の仕組み
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ラブポチ信託®とは、飼い主さんが元気なうちに生命保険に加入してもらい、亡くなった後、その生命保険を飼育費として残されたペットの世話をする画期的なサービスです。 ペットの相続問題を解決する日本初のサービスとして、福岡県の認定NPO団体ピーサポネットが提供しています。
ラブポチ信託の概要だけを説明しますと、次の2通りの仕組みがあります。
①ペットのために生命保険を掛けておき、飼主が死亡した場合、生命保険金が信託会社(受託者)に支払われ、さらに信託会社からピーサポネットに対してペットの飼育費用が支払われるもの。
②飼主様が病気や高齢等の理由で生命保険に加入できない場合、飼主様からピーサポネットに対する遺言書を作成し、飼主様が死亡した場合、ペットと飼育費用をピーサポネットに遺贈(贈与)するもの。
ピーサポネット代表者は、何としてもペット殺処分を撲滅したいという思いからラブポチ信託という仕組みを考案されたようです。ペットを護るための素晴らしいシステムですので、ピーサポネットのホームページで詳細を是非ご確認いただければと思います。
ピーサポネットは、全国の優良な老犬老猫保護施設と提携しており、飼主様に万一のことがあった場合、ペットをそれらの動物保護施設が引き取り、ペットが天寿をまっとうするまで責任をもって飼育することになります。
ラブポチ信託は、飼主様にとっても非常に安心できるシステムだと言えます。
なお、ラブポチ信託を利用されます場合、関西圏にお住まいの飼主様のときは、私も「ペット相続士」として契約に関与させていただくことがあります。
【2.アニマル セイブ システム】
大阪府能勢市に「公益財団法人 日本アニマルトラスト」という動物愛護団体があります。私もその施設を見学したことがありますが、保護した犬や猫たちを非常に手厚く世話しており、動物が天寿を全うするまで責任をもって世話をしている団体で、日本有数の優良な動物愛護団体です。
日本アニマルトラストでは、「アニマル セイブ システム」というシステムを開発しています。ペットの飼育等に掛かる1年分の費用を寄付すれば、ペットが何年生きるかを問わず、ペットが天寿を全うするまで、日本アニマルトラストが責任をもって世話をするシステムです。
ちなみに、寄付金の額は次のとおりとなっています。
犬の場合 2,000円×365日+医療費=84万円
猫の場合 1,000円×365日+医療費=42万円
医療費には、不妊手術代・ワクチン代・フィラリア予防接種代が含まれます。
以上の寄付金でペットを終生飼育してくれますから、飼主様にとっても非常に安心できるシステムになっています。
ただし、アニマル セイブ システムを利用するためには、ペットの飼主とは別に「履行責任者」の存在が条件になっています。
履行責任者とは、飼主に緊急事態が生じた場合に、飼主に代わって日本アニマルトラストに連絡をし、ペットを保護するために飼主の自宅のカギを開けることができ、飼主の代わりに日本アニマルトラストへのペットの譲渡手続きができる人のことです。
履行責任者として適任な方は、飼主様と普段から連絡を取り合っている子供等の親族や、
飼主様のご近所に住んでいる友人・知人ということになるかと思います。
アニマルセイブシステムの契約は、飼主・履行責任者・日本アニマルトラストとの間の
三者間契約になるとのことです。
飼主様の有事の際、履行責任者から日本アニマルトラストに連絡があったときは、原則としてペット送迎費用は無料で、日本アニマルトラストがペットを引き取りに来てくれます。
ただ、飼主様の自宅が遠方のために高速道路等の有料道路を使用した場合は、有料道路料金のみは別途負担していただくとのことです。
仮に、日本アニマルトラストに預けたペットが、例えば半年や1年以内に亡くなった場合は、余った寄付金は日本アニマルトラストの運営のために使われることになります。
寄付金が余った場合でも、ペットたちのために有益な使い方をされることは、動物好きの飼主様にとっては喜ばしいことかも知れませんね。
なお、アニマルセイブシステムをご利用になる場合は、私自身は契約にまったく関与しませんため、日本アニマルトラストに直接ご連絡願います。
【3.ペット信託】
ペット信託とは、自分の財産の一部又は全部を信頼できる家族等に託して、ペットの飼育のために財産を管理・運営してもらう制度のことです。
つまり、飼主様が施設に入居した場合や死亡した場合などに備えて、ペットの面倒を見てくれる家族等にお金を託しておき、残されたペットが幸せな生涯を送れるようにするための制度です。
ペットを飼育するための費用を、例えば自分の子どもに託します。
ペット飼育費用を託された人のことを「受託者」といいます。
受託者を「信」じてペット飼育費用を「託」しますので、「信託」といいます。
そして、実際のペットの世話は、受託者ではなく近所の友人あるいは動物愛護団体等が行ないます。ペット飼育費用は、受託者が動物愛護団体等に定期的に送金(または持参)します。
以上がペット信託の仕組みですが、飼主様にとって、全幅の信頼を置ける受託者が存在する場合に採り得る手段となります。この仕組みは、家族等が原則として無報酬で受託者となる「民事信託」のひとつです。
なお、生命保険信託を利用するラブポチ信託もペット信託の一つです。
ラブポチ信託の場合は、信託会社が受託者となり、実際のペットの世話をするピーサポネットが受益者になります。
当然のことですが、信託会社は無報酬ではなく、「営業として」受託者になりますので、家族等が受託者となる「民事信託」とは異なり、「商事信託」の仕組みのひとつになります。
受託者が信託会社のため、受託者による信託財産の不正な使い込みの心配がありません。また、実際にペットの世話をする受益者は認定NPO法人ピーサポネットのため、ペットが飼育放棄されたり虐待される心配がなく、全幅の信頼を置けるシステムになっています。
【4.負担付遺贈】
子ども等の親族や友人知人等に対し、ペットの世話をしてくれる代わりに財産をあげる、という遺言の方法です。
ただ、遺言の効力が発生した時点では飼主様は亡くなっていますので、財産の遺贈(贈与)を受けた人がペットの世話をキチンとしてくれているのか、確認する術がありません。
ですので、負担付遺贈の方法を採る場合も、ペットのための信託と同じく、飼主様が全幅の信頼を置ける人物が存在することが大前提となります。
なお、ラブポチ信託における一つの手段として負担付遺贈の方法があります。
ラブポチ信託の場合、負担付遺贈を受けるのは個人ではなく、認定NPO法人ピーサポネットになりますので、安心して遺贈することができます。
ラブポチ信託の負担付遺贈を利用されます場合は、私が勤務している司法書士法人が公正証書遺言作成に関与させていただくことがあります。
【5.負担付死因贈与契約】
子ども等の親族や友人知人等に対し、ペットの世話をしてくれる代わりに財産をあげる、という贈与契約の方法です。
負担付遺贈が遺言による方法であるのに対し、負担付死因贈与契約は贈与者と受贈者(財産をもらう人)との合意による贈与契約になります。
ただ、通常の贈与契約とは異なり、「死因」(死を原因)、つまり贈与者が死亡したときに効力が生じることになります。
しかし、死因贈与契約の効力が発生した時点では飼主様は亡くなっていますので、財産を贈与された人がペットの世話をキチンとしてくれているのか、確認する術がありません。
ですので、負担付死因贈与の方法を採る場合も、ペットのための信託と同じく、飼主様が全幅の信頼を置ける人物が存在することが大前提となります。
◆ペットのこと以外でのご相談◆
残されるペットのこと以外にも、遺産をどうすべきか悩んでおられる方も多いと思います。そういうお悩みにも、私個人が受託して、あるいは、私が勤務している司法書士法人で受託して、問題解決のお手伝いをさせていただくことができます。
例えば、下記のようなご相談です。
・遺言書作成
・家族信託契約書作成
・遺産分割協議書作成
・相続放棄
◆ 対応体制・連絡先◆
※ 司法書士法人に勤務しておりますため、私個人へのご依頼の場合は、対応可能時間は土・日・祝日のみとなります。
平日にメール等でご相談いただきました場合は、その当日か翌日に、仕事から帰宅してから返答させていただきます。
※ 電話連絡先:090‐8122‐2225 または 075‐200‐5551
※ 平日は司法書士法人に勤務しているため、できればメールでご相談願います。
家族信託とは
◆家族信託とは◆
家族信託とは、判断能力が衰えてきたこと等により財産管理に不安を持つ方が、自分の老後の生活等に必要な財産の管理のために、保有する預貯金等の資産を信頼できる家族や親族に託し、その管理等を任せる仕組みです。
他人に財産管理を任せて運用を行ってもらう方法としては、信託銀行や信託会社に信託する投資信託が知られていますね。一方、家族の信託は、財産管理のための報酬が不要または低廉な、家族間や親族間での利用が想定されています。
家族や親族に財産管理を託すので、投資信託のような高額な報酬は発生しません。
したがって、資産家だけのためのものではなく、財産管理のことを心配している方なら
誰でも利用できる仕組みです。
家族信託では委託者・受託者・受益者の3者が当事者となります。
委託者:財産を託す人(例:親)
受託者:財産を託される人(例:子)
受益者:信託した財産から利益を受ける人(例:親)
受託者を「信」じて財産を「託」すので「信託」と言います。
財産の所有者である委託者が信託契約等によって受託者(例えば、自分の子)に財産の管理処分の権限を与え、原則として委託者自身が受益者となって、信託した財産から給付を受けられるようにする形が一般的です。
家族信託が使われる典型例として、親は財産を持っているけれど認知症の症状が出始めていて、詐欺や悪質商法によって財産を他人に騙し取られてしまわないか子供が心配している、というケースがあります。
この場合、親は、子供を受託者として財産の管理を任せ、子供が管理する財産から年金のような形で毎月生活費を受け取る、という家族信託を組めば、親の財産と老後の生活を守ることができます。
◆家族信託のメリットとデメリット◆
【メリット】
①元気なうちから資産の管理・処分を託すことで、本人が元気なうちは、本人の指示に基づく財産管理を行なうことができ、本人が判断能力を喪失した後は、本人の意向に沿った財産管理をスムーズに実行できます。加えて、積極的な資産運用・組換えも、受託者たる家族の責任と判断で可能となります。
②遺言では、自分の死亡後の遺産相続人(一次相続人)しか指定することができません。つまり、一次相続人が死亡した場合の次の遺産相続人(二次相続人)を指定する遺言は、二次相続人の指定に関する部分は無効とされています。
しかし、家族信託なら、二次相続人や三次相続人を指定しておくことが可能です。
【デメリット】
①家族信託は「財産管理」のためのものであり、後見制度の「身上監護」機能がありません。身上監護とは、病院への入院手続きや介護施設への入所手続きなどのことを言います。同居の家族等がいる場合であれば、家族信託の委託者に代わって入院・入所の手続きをすることが可能なことも多いでしょう。
したがって、同居の家族等が受託者の場合、「身上監護」機能がないことで困る場面というのは限られると考えられます。しかし、身近に家族や親類等がいない場合は、家族信託とは別途に後見制度も併用する必要が生じることがあります。
②委託者になる人がすでに他の事業をやっていたり、不動産を所有していて、その収益で課税が発生しているとします。家族信託により管理を委託する信託財産で赤字が出ても、信託財産以外から生じる黒字と損益通算することはできません。
信託財産と信託財産以外の財産とは損益通算することができなくなり、納税額が増加することになる点はご注意願います。
◆家族信託の具体例◆
【ケース①:認知症対策】
後見制度(法定後見制度および任意後見制度)では、実際に自分が認知症等の状態になるまでは財産管理の委任を開始することができません。
特に法定後見制度の場合は、後見開始後に何かと制約が多く、非常に使いづらい制度になっています。
例えば、
①多額の財産の処分を行う際には家庭裁判所の許可を得なくてはならない
②子供や孫のために財産を使いたい(例:贈与)と思っても、原則として本人のためにしか財産を使えない
③親族の望みとは関係なく、第三者である弁護士や司法書士が後見人に就任し、決して安くはない報酬が発生する
などのデメリットがあります。
この点、家族信託を利用すれば、信頼する受託者に、自分が認知症等の状態になる前から財産管理を任せることができ、信託財産の管理処分についても信託契約であらかじめ定めておくことができますから、柔軟な資産運用に対応することが可能となります。
【ケース②:未成年の子がいる場合】
例えば、未成年の子供に財産を遺したいが、相続によって一度に財産を与えてしまうことは避けたい、というような場合です。
この場合、信頼できる親類等を受託者として財産管理を託し、実際に相続が生じた場合は親類等が財産管理を行ない、受益者である子供に対して生活費を毎月支給する形を取ります。
家族信託が終了する時期を、例えば、子供が20歳に達したとき、と定めておき、子供が20歳に達した時点で親類等による財産管理は終了させ、子供の判断で自由に信託財産を使えるようにします。
この仕組みは委託者の存命中から利用することができますから、自分の死後に備えて家族信託の仕組みを組んでおき、自分の相続が発生した場合に備えておくことができます。
【ケース③:事業承継】
創業経営者が、後継経営者となる代への世代交代を考えている場合、
経営している会社の株式譲渡について頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。後継経営者への株式の生前贈与による方法では、場合によっては多額の贈与税が掛かります。また、後継経営者に株式を生前贈与すると、創業経営者は会社の実権を掌握できなくなります。
家族信託の方法を用いた場合は、
委託者を創業経営者、受託者を後継経営者、受益者を創業経営者とすることにより、課税を心配することなく後継経営者に株式を譲渡することができます。
さらに、株式の議決権行使について【指図権】を創業経営者に留保しておけば、創業経営者が指図権を行使することにより、後継経営者に株式を譲渡したあとも創業経営者が会社経営の実権を掌握することができます。