Q:隠し子にも相続権はありますか?
A:相続権の有無は、故人が隠し子を認知していたかどうかによります。
亡き父親が、婚姻関係のない相手との間に生まれた子を認知していた場合、その隠し子も相続人となります。
その場合、婚姻関係のある相手との間に生まれた子と同様の法定相続分が認められます。
また、亡き父親が隠し子と養子縁組していた場合も同様です。
Q:遺産分割は、すべての財産について同時にしなければいけませんか?
A:必ずしも同時にする必要はありません。相続人全員が同意した財産だけ先に遺産分割をすることもできます。
例えば、故人の遺産として不動産と預貯金があり、まずは不動産の名義だけを先に変更したい場合、遺産分割協議書には不動産のみを記載することは良くあります。
Q:子どもがいない夫婦の場合、相続対策をしておくべきですか?
A:子どもがいない夫婦の場合、原則として相続対策は必須といえます。
例として夫が亡くなった場合について説明します。
夫が亡くなり、夫の両親がすでに亡くなっていて、夫に兄弟姉妹がいる場合、妻と「亡夫の兄弟姉妹」が法定相続人になります。
夫が何の相続対策も取らずに亡くなった場合、亡父の兄弟姉妹は法定相続分として4分の1の遺産を相続する権利を持つため、妻は、亡夫の兄弟姉妹との間で遺産分割協議をしなければなりません。
通常、夫の思いとしては、妻の生活を心配して、自分の遺産はすべて妻に相続させたいと考えているでしょう。
しかし、妻と「亡夫の兄弟姉妹」との関係が険悪であった場合や、亡夫の兄弟姉妹が経済的に困窮している場合、亡夫の兄弟姉妹が4分の1の遺産を取得することを強硬に主張してくることがあります。
遺産分割協議の結果、妻が単独で遺産を相続することを良しとせず、亡夫の兄弟姉妹が4分の1の遺産を取得することに固執した場合、兄弟姉妹に法定相続分を渡すために、亡夫と二人で住み慣れた自宅を売却しなくてはならない悲劇が生じることもあります。
以上のようなトラブルを防ぐためには、夫が生前に、「財産はすべて妻に相続させる」という旨の遺言を残しておくだけで、夫の兄弟姉妹が相続人として登場してくることを防ぐことができます。
また、遺言とは別の方法として、婚姻期間が20年以上の夫婦であれば、【夫婦間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除】という特例が利用できるため、贈与額が2,000万円まで贈与税がまったく掛かることなく妻に自宅を贈与することができます。
Q:兄弟姉妹も相続人になりますか?
A:①父母と子がいて父が亡くなり、母と子が存命である場合、父の法定相続人になるのは母と子のみです。
父に兄弟姉妹がいたとしても、兄弟姉妹には相続権はありません。
②父母と子がいて、先に母が亡くなったあと父が亡くなった場合、子が存命であれば、父の法定相続人になるのは子のみです。
父や母に兄弟姉妹がいたとしても、それらの兄弟姉妹には相続権はありません。
③父母と子がいて、先に子が亡くなったあとに父が亡くなり、母が存命の場合はどうでしょうか。なお、子に子(孫)はおらず、父の両親はすでに他界しているケースです。
この場合は、父に兄弟姉妹がいたときは、母と「父の兄弟姉妹」が父の法定相続人になります。
父が遺言等により相続対策をしていなければ、父の兄弟姉妹にも相続権が生じるということです。
Q:相続放棄する場合の注意点 は何ですか?
A:相続放棄したことにより、思わぬ人物が相続人として登場してくることがあります。
例として、父母と子2人の家族構成であったとします。
父の両親や祖父母はすでに他界しており、父には兄弟がいるケースです。
父が亡くなり、子2人は、今後の母の生活を守るために、父の遺産はすべて母に相続させたいと考えて、2人とも相続放棄の手続きを取ったとします。
この相続放棄により、父の相続人が母ひとりになると考えるなら、それはとんでもない間違いです。
子2人が相続放棄したことにより、子は初めから相続人ではなかったことになり、このケースでは、母以外に、父の兄弟が新たに相続人として登場することになります。
そのため、母が父の遺産をすべて相続するためには、母は、父の兄弟との間で遺産分割協議をしなければならないことになります。
父の兄弟の人間性が良くて、子2人の「母にすべてを相続させたい」との思いを理解してくれる人であれば何ら問題はありません。
しかし、亡き父の兄弟が相続権を主張してきた場合には、兄弟の法定相続分である4分の1を譲らざるを得なくなります。
子2人は、母の生活を心配して相続放棄したのに、せっかくの子どもたちの願いは叶えられないことになります。
もし、父に兄弟が最初からいなかったのであれば、子2人が相続放棄することにより、母に全遺産を相続させることができます。
しかし、この事例の場合は、子2人は相続放棄すべきではなく、母と子の3人で遺産分割協議を行ない、「母がすべての遺産を相続する」旨の遺産分割をしなければならないということです。
Q:相続放棄する場合のマナーとは何ですか?
A:相続放棄する場合にもマナーはあります。
例として、父(A)と母、子2人という家族構成で、Aが多額の負債を残して亡くなったとします。Aの両親や祖父母はすでに他界していて、Aには弟が1人いましたが、Aよりも先に亡くなっていて、その弟には子(B)がいるというケースです。
Aの死亡を受けて、母と子2人が相続放棄をした場合、Aの弟の子であるBに相続権が移ることになります。
もし、Aが死亡したことも、Aの家族全員が相続放棄したことも伝えられなかった場合、Bは自分が相続人なったことを知ることができません。
そして、ある日突然、Aの多額の負債について、債権者から「支払って下さい」という通知が Bに届くことになります。
このように、先順位の相続人が次順位者に黙って相続放棄をすると、次順位の相続人は、借金の督促等によって自分が相続人になったことを、ある日突然知ることになります。
なお、家庭裁判所が次順位者に対して、「先順位の相続人が相続放棄したので、相続権があなたに移りました」などと親切に通知してくれる制度は存在しません。
ところで、債権者からの督促がBに届いた時点で、A死亡からすでに3か月が経過していたとします。
相続が開始してから3か月が経過したら相続放棄は不可能、と一般には思われています。
しかし、相続開始を「知った時」から3か月以内であれば相続放棄は可能です。
この例では、Bが「債権者などから督促を受けた日」から3か月以内であれば、Bはなお相続放棄することができます。
つまり、先順位の相続人がBに何も伝えないまま相続放棄しても、Bも相続放棄することができるため、BがAの負債を相続することはありません。
しかし、Bに対するマナーを欠くと、親族関係の悪化は避けられないことになるでしょう。
親族関係が絶縁している場合ならともかく、相続放棄をする場合は、次順位の相続人に対して相続放棄した(相続放棄する)ことを伝えるのがマナーです。 そして、次順位の方に対して、相続放棄手続を取る必要があることを知らせてあげてくだ さい。
Q:遠縁の叔父(2年前に死亡)が所有していた不動産について、市役所から固定資産税納税通知書が届きました。私が支払わねばならないのでしょうか?
A:相続放棄は、原則として、自分が「相続人になったことを知ったときから3か月以内」であれば家庭裁判所に申し立てる(「申述」といいます)ことができます。
ご質問のように、遠縁の親戚の固定資産税について納付書が届いたり、債権者から督促状が届いたりして困惑している相談者は珍しくありません。
この事例のようなケースで、遠縁の親戚が死亡した事実は風の噂で知っていて、死亡したことを知ってから3か月以上が経過していたとしても、自分が「相続人になったことを知ったときから3か月以内」 であれば、なお相続放棄の申述ができます。
この事例でいえば、遠縁の叔父の家族全員が相続放棄し、叔父の兄弟も既に死亡していたために相続権が自身に回ってきた場合は、 「叔父の家族全員が相続放棄したことを知ってから3か月以内」であれば、なお相続放棄ができるということです。
相続放棄ができる期間は、「被相続人が亡くなってから3か月」と誤解されているケースが多く見られますが、そうではないということです。
Q:亡父の実家があった田舎に、先々代から受け継いでいる「負動産」がありますが、この負動産を所有するのは私の代で終わりにしたいと考えています。もちろん、自宅や預貯金などのプラス財産は、妻や子に引き継がせるつもりです。どういう方法がありますか?
A1:令和5年4月から【相続土地国庫帰属制度】が始まっていますので、この制度を利用する方法があります。
これは、田舎にある不要な土地を国が引き取ってくれる制度です。なお、境界が不明瞭な土地や建物が建っている土地等については土地国庫帰属制度を使うことはできません。
この制度を利用するには、土地1筆につき最低20万円の負担金を国に納める必要があります。田舎に多数の山林や畑などがある場合は、負担金だけでも相当の費用が掛かるのが難点です。
A2:【オシドリ夫婦贈与】や【相続時精算課税制度】を利用して、妻と子に「負動産以外の財産」を生前贈与し、自身が亡くなったあと、負動産について相続人全員が相続放棄する方法もあります。
【オシドリ夫婦贈与】とは、婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産(又は居住用不動産を取得するための金銭)の贈与が行われた場合、贈与額が2,110万円までであれば贈与税が非課税になるという特例です。
【相続時精算課税制度】とは、60歳以上の直系尊属から18歳以上の子どもや孫に対して、1人につき最大2,500万円まで贈与税の負担なしで財産を生前贈与できる制度です。
相続時精算課税制度により生前贈与を受けた場合でも、その後贈与者が亡くなった時に相続放棄することができ、相続放棄しても生前贈与を受けた財産を手放す必要はありません。
なお、相続時精算課税制度を利用して生前贈与された財産は、贈与者が亡くなると、相続税の課税対象になります。
つまり、相続放棄しても、相続時精算課税制度により生前贈与された財産の総額が基礎控除額を超える場合は、相続税が課税されることになります。
Q:相続登記(名義変更)を司法書士に依頼したいが、どの司法書士事務所に依頼しても大丈夫ですか?
A:医者でも外科や内科・精神科・産婦人科などに専門分野が分かれているとおり、司法書士の場合もそれぞれ得意分野があります。相続登記は相続分野に精通した司法書士に依頼するほうが無難といえます。
債務整理に精通した司法書士、不動産登記に精通した司法書士、商業登記を得意とする司法書士、あるいは、少数ですが裁判業務を得意とする司法書士など、それぞれの司法書士によって得意分野・専門分野があります。
外科の病気の相談を精神科の医師にはしないように、餅は餅屋で、相続に関する相談は相続分野に精通した司法書士に相談することを勧めます。相続税が発生するケースでは尚更です。
相続税が発生するケースでは、「第一次相続」のみならず「第二次相続」をも視野に入れた相続税対策が必要になるため、相続税に精通した税理士との連携が不可欠となります。
例えば、父親が亡くなった場合が「第一次相続」で、次の順番として母親が亡くなった場合のことが「第二次相続」ということです。
そのため、第一次相続において 、ただ単に、例えば「妻単独名義に相続登記すればよい」という安易な発想では済まされず、トータルで最も相続税が低くなる方法は何かという視点で、十分な検討を踏まえたうえでの名義変更が必要になります。
相続登記に限らず、事件を依頼する場合は、その司法書士の専門分野・得意分野は何か、を見極めたうえで依頼する必要があるといえます。
Q:遺言は公正証書遺言にすべきですか ?
A:遺言には、大別すると【自筆証書遺言】と【公正証書遺言】の2種類があります。
自筆証書遺言は自身の手で書く遺言で、いつでも自由に作成することができます。
ただ、遺言の形式に不備があると遺言が無効になる危険性があります。
一方、公正証書遺言は公証人が作成します。
公証人とは、裁判官や検事、弁護士などを前職とする法律のプロです。
公証人が作成するため、公正証書遺言が無効になるケースはほぼ皆無といえます。
自筆証書遺言でも大丈夫か、あるいは公正証書遺言にすべきかはケースバイケースです。
例えば、遺言者が自筆証書遺言の内容を家族(相続人)全員に生前に伝えていて、家族全員が遺言内容に納得しているような場合は、敢えて公正証書遺言にしなくとも、後に争いが起きる可能性はほとんどないといえます。
もっとも、自筆証書遺言にする場合は、自筆した遺言の内容に不明瞭なところはないか、また、遺言の形式に不備はないかを十分に確認する必要があります。
ただ、遺言者が高齢等のために自筆ができない場合は、自筆の必要がない公正証書遺言にせざるを得ないといえます。
また、遺言の内容に異議を唱えるであろうと思われる相続人がいる場合は、公正証書遺言を作成することを勧めます。
遺言無効確認訴訟において主張されることが多いのが、「遺言作成時に遺言者には既に遺言能力が無かった」とか、「判断能力の低下した遺言者に、相続人の1人が、自分に有利となる内容の遺言を書かせた」などというものです。
この点、公正証書遺言の場合は、公証人が遺言者と直接面談し、遺言者の判断能力や意思を確認したうえで公正証書遺言を作成するため、後日、遺言が無効となるリスクをほぼ排除できます。
ちなみに、面談の結果、公証人が「遺言者は遺言する能力がない」と判断した場合は、公正証書遺言を作成しないことになります。
以上、公正証書遺言にすべきかどうかは、遺言者の置かれた状況を総合的に勘案する必要があります。
Q:遺言執行者は指定しておくべきですか?
A:遺言書を作成する人が年々増加する傾向にあるようです。
ところで、遺言書を作成する場合は、【遺言執行者】を定めておくことが通例です。
遺言執行者とは、遺言者が亡くなったあと、遺言者の遺志を実現させるための手続きを行なう人のことです。
例えば、遺言者の不動産を、遺言書で指定された人の名義に変えたり、遺言者の預貯金を解約して、遺言書の内容通りに相続人等に分配したりする役割を負います。
遺言執行者を指定しておかないと、遺言の執行に際して遺言者の相続人全員の協力が必要になりますので、遺言執行者の指定は不可欠といえるでしょう。
私は、遺言執行者を指定する場合は、遺言者より一回り(10歳)以上年下の人を選ぶことをお勧めしています。なぜなら、遺言者と同年代の人を遺言執行者として指定すると、遺言執行者の方が先に亡くなってしまう危険性があるためです。
遺言執行者として自分の子どもを指定する場合は、子どもは遺言者より二回り以上は年下でしょうから、基本的には大丈夫だと言えます。
ただ、子どもが事故や病気などで先に亡くなる危険性を考慮すると、できれば子ども2人以上を遺言執行者に指定しておくと安心です。
遺言執行者として子どもや親族など適任の人物が見つからない場合は、司法書士や弁護士などの専門職を指定することもできます。
専門職を遺言執行者に指定する場合も、遺言者より一回り以上年下の専門職を選ぶと安心かも知れません。
なお、専門職を遺言執行者に指定する場合、個人事務所の専門職個人ではなく、司法書士法人や弁護士法人を指定することもできます。
個人の専門職を選んだ場合、その専門職が事故等の不慮の事故で遺言者より先に亡くなってしまうと、遺言執行者が不在という事態になります。
一方、専門職が複数在籍しており、実績がある法人を遺言執行者にした場合、その法人に所属する専門職が仮に亡くなったとしても、遺言執行の手続きを遂行するのは法人そのものですので、法人が解散等をしない限りは、遺言執行者が居なくなるという事態を避けることができます。
Q:予備的遺言とはどういうものですか?
A:遺言者には子A・Bの2人がいて、A・Bそれぞれに遺産を相続させる遺言の作成を考えているとします。
この場合、「子Aには●●を、子Bには●●●を相続させる」という内容の遺言で大丈夫でしょうか。
悲しいことですが、子が親よりも先に亡くなることがあります。
上記の遺言内容の場合、仮に、Aが遺言者よりも先に亡くなったときは、「子Aには●●を相続させる」という遺言の部分は無効となります。
そして、Aが相続する予定であった遺産は法定相続の対象になります。 つまり、遺言者の法定相続人全員による遺産分割協議の対象になります。
このような、遺言で相続させる予定の人が遺言者よりも先に亡くなるという事態に備えて、遺言書において【予備的遺言】を定めておけば安心です。
この事例でいえば、「子Aが遺言者よりも先に亡くなっていた場合は、Aの子に相続させる」という具合です。子Bについても同様の措置を講じておきます。
Q:親が再婚した場合の注意点は何ですか?
A:例として、父親には子が一人いて、妻には先立たれているとします。
妻の死亡後に父親が再婚した場合、その再婚相手Aと子とは当然には親子関係になりません。
「父親が再婚すれば、自動的にその再婚相手と親子関係になる」と誤解されている方がいますが、自動的に法律上の親子関係が生じることはありません。
事実上の親子関係が生じるのみです。
子と再婚相手Aとの間で法律上の親子関係を生じさせるには、養子縁組を行なう必要があります。 養子縁組による法律上の親子関係がない限り、再婚相手Aが亡くなった場合でも、子が再婚相手Aの相続人になることはできません。
子と再婚相手Aとが養子縁組をしないうちに父親が亡くなったとします。
父親が亡くなった場合は、再婚相手Aと子が相続人になります。
法律で定められた相続分は、再婚相手Aと子が各2分の1ずつです。
父親死亡により、父親の遺産の2分の1を再婚相手Aが相続したあと、再婚相手Aが死亡した場合はどうでしょうか。なお、再婚相手の両親はすでに他界しており、再婚相手には妹が1人いるとします。
この場合、再婚相手Aの相続人になるのは その妹1人であり、子が相続人になることはできません。つまり、亡父が築き上げた財産の2分の1近くが、再婚相手Aの妹の手に渡ることになります。これでは、子は納得が行かないでしょう。
以上のような事態を防ぐために、可能であれば、子と再婚相手Aとの間で養子縁組をしておきたいものです。
養子縁組により、子は再婚相手Aの実子としての身分を得ることができるため、再婚相手Aが亡くなった場合の相続人は子のみになります。再婚相手の妹が相続人になることはありません。
つまり、亡父の遺産を最終的には子がすべて相続できることになります。
養子縁組以外の方法として、再婚相手Aに、「私の全財産は再婚した夫の子に遺贈する」という内容の遺言書を作成してもらうことも考えられますが、やはり養子縁組が最良の方法だといえるでしょう。
Q:孫にも財産をあげたいが、どうすればいいですか?
A:自分の孫にも財産を遺してあげたいと考えておられる相談者の方は多いです。
子が存命の場合、孫は相続人にはなり得ません。
子が健在の場合、生前贈与等以外の方法で 孫に財産を遺すには、遺言書を作成して孫に財産を「遺贈」するしか方法はありません。
可愛い孫にも遺産を遺したいという相談を受けて私がしばしば提案するのは、例えば、「自宅は子に相続させ、●●の預金については孫Aに遺贈する」といった内容の遺言の作成です。
なお、遺言者に多額の財産があって相続税が掛かる場合は、孫に遺贈された財産に相応する相続税は2割加算となる点、注意を要します。
相続税の2割加算とは、被相続人の配偶者および一親等内の血族以外の者が遺産を承継した場合には、その者の相続税が2割加算されるという規定です。
孫は一親等内の血族ではないため、2割加算の対象になります。
なお、遺言者の子がすでに亡くなっている場合は、その子に代わって孫が法律上の相続人になるため、敢えて遺言書を作成しなくとも、孫に遺産を遺せることになります。
Q:遺産分割における代償金の確保はどうすればいいですか?
A:遺産分割において、遺産として、不動産のほかには預貯金が少々あるだけという事例は良くあります。
このようなケースで相続人全員の共有名義にすると、相続人の内の誰かが死亡した場合に相続関係が複雑になるため、共有名義は避けたほうがいいのが原則です。
そこで、遺産である不動産を、相続人のうちの1人の単独名義に変更することが基本となります。
この場合、遺産たる不動産を相続する相続人が、他の相続人に対して代償金を払う資力があれば問題ありませんが、その資力がないというケースがままあります。
その場合、先で相続不動産が売却できた時点で、不動産の売却代金を法定相続分で分ける、という提案をすることになります。
ただ、不動産を相続しない相続人としては、本当に代償金を支払ってもらえるのか、不安に感じるケースもあります。
このようなケースでは、遺産分割協議書を公正証書で作成しておくという方法があります。
通常、遺産分割協議書は公正証書ではなく私文書で作成します。
私文書の遺産分割協議書の場合は、遺産分割の代償金の不払いがあったときは、代償金支払いを求める訴訟を起こし、その勝訴判決でもって強制執行するという手続きを踏む必要があります。
しかし、遺産分割協議書を公正証書で作成し、「強制執行認諾文言」を盛り込んでおけば、代償金の不払いがあった場合、訴訟を起こすことなく、この公正証書でもって直ちに強制執行することができます。
「強制執行認諾文言」とは、「代償金支払い義務を怠ったときは、直ちに強制執行に服します」という内容の文言のことです。
代償金の支払いに不安がある場合は、このような方法もあるということです。
Q:夫に先立たれ、子どもとは疎遠で、持ち家に一人で暮らしています。高齢のため、自分の身に何かあったとき、廃墟となった自宅が近隣に迷惑を掛けないか、とても心配です。
A: 家族・親族とは疎遠でも、信用できる友人・知人がいる場合は、友人等との間で【任意後見契約】を結んでおく方法があります。
任意後見契約とは、認知症になった場合に備えて、本人の判断能力が十分なうちに、任意後見人(候補者)に代理権を与えておく契約です。
任意後見人は、判断能力が低下した本人の代わりに、本人の療養看護や財産管理を行なうことができます。
そして、任意後見人に与える代理権の一部として、自宅の売却・処分に関する権限を明記しておけば、本人が認知症になって施設入所の必要が生じた場合、本人の代わりに任意後見人が自宅を売却して、施設入所費用に充てることもできます。
また、認知症になることなく最期まで自宅で暮らせた場合に備えて、任意後見契約とは別途に、自宅を任意後見人に「遺贈」する旨の遺言書を作成しておけば、相談者が亡くなったあと、任意後見人が自身のものとなった自宅を売却処分することもできます。
任意後見契約は本人が死亡すると同時に終了するため、本人の死亡後に自宅を任意後見人に売却処分してもらいたい場合は、自宅を任意後見人に遺贈する旨の遺言書を作成しておく必要があります。